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   サクセスの原動力、欲望

               ◎林 真理子  『 ワンス・ア・イヤー』
                             
私はいかに傷つき、いかに戦ったか
                                                         
 
 林真理子も、今年で50歳!
 テレビに出なくなってから、ずいぶん経ったものだ・・・。

 林真理子のエッセーは、うちの奥さんが好きでよく読んでいた。
 「何だか、軽薄そうな文章だこと」 と、最初はバカにしていたものの、しまいには、
 おれのほうが、逆転して熱心な読者に。
 
 テレビで見る林真理子は、それは場違いな感じがしたものだ。
 きれいでもない、お笑いでもない、特別な芸をもつわけでもない。
 単にその時、脚光を浴びまくっていたコピーライターの一人という存在。

 但し、会話はなめらかだ。そして不思議にあきさせない。
 「素人くさい、それでいて目が離せなくなる、この妙な感じはなんなんだ?」
 と、逆に新鮮さを感じたものだ。

 あの、『変な違和感をもう一度!』と、思ってもテレビではもう会えない。
 
 その林真理子の自伝長編小説、「ワンス・ア・イヤー」
 最初のページから、ひきつける。
 
 別に自慢にもなりゃしないけど、マイクを持って池袋の街角に立ってこう叫びたい。
 
「聞いてくださいよ、私ぐらいついていない女ってちょっといませんよ。本当ですったら」
 
 と、恋人もちょっとしたお金も、仕事さえも手にしていない二十三歳の主人公の現実。
 その現実から旅立つサクセスストーリーを描いている。

 なぜ、何も持っていない彼女が成功していくか?
 それは、文才と、彼女自身が持っている”野心”と”欲望”の強さかもしれない。

 夜は会社の仲間と連れ立って、新宿の安いスナックに飲みに行く。みんな陽気で若
 かったけれど、悲しいほど才能と野心というものを持っていない。
 私たちぐらいの年齢で、野心というものを持っていないなんて 最初は信じられな
 かった。
 
「そりゃそうよ。野心があったならこんなチラシやっているわけないじゃないの」
 デザイナーの女の子が言う。


 二十五歳のコピーライターとなった彼女は、いつもいらだっている。
 『私はこんな人たちの中にいるべき人間ではない』と思うのだが、他に行き場所が
 なくて。

 そして、二十八歳のときに、ベストセラーになるエッセイ集を出す。
 そこから、彼女のつきが始まる。その本に対する本人の分析。

 就職先がなく、みじめさを噛みしめていた頃、友の成功に暗い嫉妬を燃やした等、
 そんなエピソードもいくつか書いて、私のお腹を裏返してまで見せたような思い
 さえある。こんな本が本当にあっただろうか。売れないはずがないじゃないかと、
 わたしはかなり傲慢な気持ちになっている。


 本のベストセラーとともに、マスコミの売れっ子になった二十九歳の彼女。
 彼女はある計画をたてる。
 今まで付き合ってきた男に、嫉妬させた上で怒らせようと・・・。
 『もう私が自分の手の届かないところへいき、自分とは比べものにならないほどの
 ランク
の男と愛し合っている』という事をネタに。

 「けっ、本当に嫌な女だぜ」 と、男は出ていく。
 彼女は計画通りに男が怒った事で、少しばかりの良心の呵責と、大きな幸福感に
 包まれる。

 彼女が30歳の時。 
 エッセーのベストセラーをたて続けに出す彼女のところに、出版社がいくつも
 アプローチしてきた。
 そのなかで、全くなんの連絡もしてこない大手の出版社があった。
 そこの出版社から、ようやく電話が入り、六本木の喫茶店で合うことになる。
 
 その人物に対する彼女の印象がすごい。
 
 とても太っているうえに、まるで自分の横幅を強調するかのようなぴっちりしたポロ
 シャツを着ている。乳首が浮き出ていて、私は目をそらした。
 それよりも許しがたいのは、彼がオレンジジュースを飲んでいることだ。

 
 この男に対する彼女の強烈なマイナス印象。
 それと、並ぶくらいの言葉をこの男はぶつける。

 「あんたのこと、いろんなとこでいろいろ聞いてさ、きっと嫌な女だろうと思ってきた
 けど、ひと目見てわかったよ。あんたはね、生まれながらにしてものを書くように
 出来てる人間なんだ。いま、すぐ見てわかったよ。あんたは、全身、膿が吹き出し
 てて、カサブタだらけだ。いいよ。あんた。きっといいものが書けるよ」


 そして、まだエッセーだけで小説すら書いてない彼女に宣言する。
 「いや、だから何度も言ってるじゃないか。君は絶対に小説を書ける人だって。君は
 そして直木賞を獲る」


 それから二年後、その編集者の予言どおり、彼女は、直木賞を受賞する。

 直木賞受賞のパーティの後の夜。
 その時の彼女の心理がいい。

 今夜のパーティの主役で、みなに誉められた女、それが私だ。彼のいまおじけつい
 ている心は、夜になると変わるだろう。私のような女を抱く喜びで、彼のすべてはいき
 りたつだろう。私のことをどんなふうに扱い、どんなふうに満足させるのか。
 私はいま自分がとてもまっすぐに淫乱だと思った。


 ズーーーーと、あらすじばかり紹介しててもなんだから、これくらいにするけど、
 これはひさびさに本当におもしろく熱中する小説。
 内容が奇麗ごとで終わってない。エッセーに書かれていなかった、タレントであった頃の
 林真理子が感じていた事も、書かれている。
 コメディアンを怖がる彼女の心理など・・・。
 
 オレは、通勤時間が長いから、軽めのエッセー、内容が固めのノンフイクション、その
 中間くらいの小説と、常時、三冊くらいの本をかばんに入れているのだが、この小説を
 読み出してから、他の本に目がいかなかった。

 元気いっぱい、欲望いっぱいの林真理子。
 その独特なサクセスストーリーの中に、小説が終わるまでズッポリ入り込んでしまう。
 
 

                  2004年5月2日


       



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