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   裏本から飛翔、村西とおる

                        ◎本橋 信宏
                                   
『裏本時代』  (新潮OH文庫)
                                                         
 
 テレビでは、アダルトビデオ監督にインタビューしていた。
 おや?と、思ったのは、その監督が、言葉は丁寧だが、あまりにも堂々としていた事だ。
 自分の職業を照れるところがない。一点の曇りもなき、すがすがしさを発していた。
 インタビューが、中盤にさしかかってきたとき、監督が何の意味もなく、首からぶら下げ
 ていた、笛を「ビーー!」と吹いた。

 インタビューしていた人は、あっけにとられ、監督は済ました顔。オレは、突然の展開に、
 大笑いしてしまった。それが、作家、井田真木子の言う、
 『日本一忙しい男根をもつ名セールスマン・村西とおる監督』を見た最初だった。

 テレビで興味をもってから、意識的に村西とおる監督の、アダルトビデオをレンタルする
 ようになった。ビデオ女優の質が、多少落ちようとも、監督の強引な技で、そこいらのビ
 デオより、ダントツにおもしろく仕上げているのが、すばらしかった。
 女優の胸をいきなりわしづかみにして、「富士の山!」と叫んだり、演じている女優まで
 が、笑いを必死にこらえているおもしろさが、あった。

 村西とおると、一世を風靡した黒木かおるとの生活。これは、意外な一面だった。
 村西はAVの収益を、衛星放送のチャンネル獲得に注ぎ込みはじめる。女優やスタッフ
 への支払いは滞り始め、黒木かおるの貯金にも手をつけだす。
 彼が経営のダイヤモンド映像は壊滅の速度を速める。

 そんな時の、黒木かおるの発言。九二年の春、村西とおるが朝帰り。
 彼女はバスタブにつかっていた。

 ”すぐそこから出るように”と言われました。私が出ますと、やにわに吹き飛ばされまし
 て、あの方は大変、力が強いものですから、私は五メートルほどふきとんでしまい、そ
 れでも足りなくて殴る、蹴る。
 つまり、自分は朝まで金策にかけまわっておられた。それなのに、悠長に風呂などに
 つかっているとはいったいなんだ。そういうことだと思います。
                            井田真木子「フォーカスな人たち」より。


 ここまでが、「裏本時代」を読むまでの、オレが読んだり見たりした、村西とおる。
 そして、裏本時代で、描かれている彼の面白さとは・・・

 とにかくエネルギッシュの一言につきる。
 目指すは、日本一。安易な妥協はせず、つねに突っ走る。
 彼が、発言した内容を並べてみるだけでも、それは伝わってくる。
 
 わたしはこの池田編集局長と同じ昭和二十三年生まれなんです、三十四歳、いま
  が勝負のときなんです、いくら時間があっても足りないくらい働いているんです、
 ○わたくしはたしかに裏本の世界では二年たらずの間で日本一になりました。当初わ
  たくしが日本一になるんだといってもうちのスタッフは誰も信用しませんでした、です
  がなれるんです、
  おれは日本一なんかなれっこない、最初からそんなこと思ってたら何もできません、
  でもなれるんですね、

 それからは英会話教材のセールスマンです。前にも話したようにここで売り上げ
  日本一の記録を成し遂げたわけです。中学時代から学校の成績は振るわなかったん
  ですが、一度逢った人間には死ぬまで忘れられない男になってやるんだといつも思っ
  ていましたし、実行もしてきました。
 まず、自分の顔を鏡でじっくり見てみるんです。この顔は果たして世の中で選ばれた
  人間のものかと。思えませんよね、後光がさしているなら別ですけどね、到底思えま
  せん。これはもう自分の人生にラッキーなんて絶対あり得ない、それを覚悟すること、
  さあそこから人間の努力がはじまるわけです。

  この本の作者本橋は、裏本制作に関わった事から、村西とおると知り合う。そして彼
  が提案した写真週間誌「スクランブル」の編集長となる。
  「FOCUS」と、同じ系列で、芸能色の強さを全面に押し出した雑誌だ。

  しかし、出費者の村西とおるのやっている、裏本やビニ本が傾き始めた事により、
  雑誌の知名度があがったにもかかわらず、雑誌は休刊に追い込まれる。
  全てがなくなってから、一週間後。
  村西から電話が入り、歌舞伎町のパリジェンヌで待ち合わせる。

  体にどこからか空気の抜けていくような毎日を送っていた作者に、檄を飛ばす。
  「本橋、おれはあきらめちゃいないからな。きみもファイトするんです、もう一度カネ
  ができたら『スクランブル』やるから、わかりましたね」

  村西は、北海道警察に全国指名手配されていた。
  「じゃ行くからな、かならず連絡するから」と、去ろうとする村西に前から抱いていた
  疑問をぶつける。
  ”どうして『スクランブル』をあれだけ熱心にやろうとおもったんですか。裏本やビニ本
  を作って売ってたほうが経営も安定してたはずですよ。”と。
  「流通を制するものは資本主義を制するという法則を実証しかけたところで頓挫して
  しまったんです。裏の世界では実証できたんですけどね。わたくしには意地があるん
  です、目の前のちっぽけな成功に甘んじていられるような性分じゃないんです」


  「編集長、忘れるなよ、おれたちのやろうとしたことを」と言い、去っていく。
  村西とおるは、おもしろく熱い人物だ。

  作者が「あとがきのようなもの」にも書いている。
  『彼の航路はドストエフスキーかトルストイ級の作品に匹敵するほどのものがある』と。
  
  この「裏本時代」という本は、村西とおるという、人物を中心に、裏本・そして写真週間
  誌の編集の知られざる裏側が描かれている。
  この面白さは、オレの中では、ジェットゴースター本の一つ。
         (一度読み出したら、エンディングに至るまで、離れられずに、あっという間に読み進む)
  
  最近、読んだ本の中で、一番面白かった本です。ぜひ一読を。


                   2004年5月16日






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