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映画では、描かれなかった地獄
  

        ◎F.アバネイル S.レディング  『世界をだました男』                              
 
 「お勧めの面白い本なーい?」と、女子社員が
、おれに聞いてきた。
  『納期に追われて、あせって仕事しているとき、なんちゅー質問だ。』と、思い
 つつ、サービス精神旺盛のおれは、ついつい考え込む。

  最近、読んだ本のなかでおもしろかった内容の本が、頭の中でぐるぐる回る。
 そして答えがひらめく。
 「世界をだました男が、面白かったよ。」自信を持って答える。
 「え?どんな本?」
 「ディカプリオトム・ハンクスが共演した映画、知ってる?スピルバーグが監督
 して、その原作になった本」
 「なんてゆう映画?」

  それが浮かばない。なかなか浮かばない。頭の中の深い沼の中に、映画の
 タイトルがもぐりこんでしまった。ただし、映画は観にいったので、内容は言える。
  
 「ディカプリオが詐欺師でさ。パイロットになったり、医者になったり、法律家に
 なったりする映画。印象的な予告編があったよね。パイロットに化けたディカプリ
 オが、スチュワーデスの制服を着た女子大生と、腕組んで歩くやつ。あの、おも
 いっきり明るく楽しそうなシーン」
  「あ!キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンだ!」
 と、全然関係のないところから、ド太い声で正解が出てくる。それで満足したら
 しくその男は自分の仕事に集中している。変なの。

 「私も、その映画知ってる。まだ見てないけど、面白そーだなって、ビデオ屋で
 何度か思ってた。」女子社員が、うれしそうに言う。
 「おれは映画より、原作のほうが、おもしろかったよ。但し、最後の方は、詐欺
 師の明るく愉快な生活から、地獄に落とされるけど。」
 「え?地獄に落とされるの。メリハリあって、おもしろそー。石沢さん、今度持っ
 てきて。」

  リクエストに答えて次の日、彼女に本を貸す。数日後、本が戻ってきた時に、
 感想を聞くと、帰ってきた言葉。
  「本当にあった事だとは、思えないわね。はったりでなく、世界をだました男っ
 て感じね。」
  
  「フランスの刑務所での部分、読んだ?」おれは、そこが聞きたかった。刑務
 所での事は、映画ではサラリとふれられていただけだから。
  「すごすぎ。気持ち悪くなって、私、読み飛ばしちゃった。」
  読み飛ばすのもわからなくもない。フランスの刑務所は、ひど過ぎる。あれを
 読んだら(フランスでは、どんなにおいしい話しをもちかけられたとしても、絶対
 に犯罪を犯すのはやめよう)と、思ってしまう。

  作者のフランク・アバネイルが、描くほんの数行で、いかにその刑務所が、恐
 ろしい所なのかが、伝わってくる。

  わたしは目が暗闇に鳴れるのを待った。房には何らかの光源から光が漏れ
 てくるという気配はなかった。 (中略)  結局、目が慣れることはなかった。
 完全な暗闇に目が慣れるということはないのだ。

  これでは失明と同じ状態だ。

  わたしはにわかに怯えを感じた。実際、恐ろしかった。地獄のような地下牢で、
 一年間、生きのびられるのか、あるいは、どうしたらそれが可能なのか、見当も
 つかなかった。

  暗闇の恐怖だけではない。次には、排泄物の恐怖、そして体・心の病気との
 闘いになる。

  バケツがわたしのトイレだった。だが、トイレットペーパーはもらえず、バケツ
 は使用後もかたづけられなかった。わたしはまもなく悪臭には慣れたが、二、
 三日たって、バケツがあふれると、自分の糞便のせいで、動き回ることも、眠
 ることもできなくなった。
  シラミをはじめとして、悪臭ぷんぷんの房にもぐりこんだ小さな虫が、体毛に
 巣くい、遠慮なく肉をかじった。かきむしるうちに傷口がひろがり、なくなること
 のない汚物との接触で、細菌が入りこんだ。わたしの体は、まもなくかさぶただ
 らけになった。
  わたしは、二,三週間が経過した時点で、自分も正気を失うだろうと確信し
 た。何が現実で、何が非現実か、識別する能力を失って、幻覚を見はじめた。

  しかし、作者がこの環境で、狂わなかったのは、自ら幻想のイメージを膨ら
 ませていたからだ。
  あるときは、パイロット。満員の乗客に、シックでグラマラスなスチュワーデス
 にかしづかれる。巨大な機を空中に舞い上がらせ、高度三万五千フイートで水
 平飛行に移る。

  また、あるときは有名な外科医になって、大統領の手術を行い、みごとな腕で
 命を救う。
  また、あるときは映画監督になり、オスカー受賞の大作を撮る、などなど・・・、
 現実とは、かけ離れたイメージの旅に出ることにより、正常な意識をぎりぎりに
 維持できたのだ。
 
  五ヶ月めにしてアメリカの領事館の訪問を受けて、パリの刑務所から、彼は
 ようやく開放される。
  その後、詐欺対策コンサルタントになり、FBIアカデミー教壇に立つとともに、
 FBIナショナルアカデミーで、全国の法務執行機関の捜査官を指導するプログ
 ラムを受け持つに至る。

  それにしても、作者の人生はユニークだ。詐欺生活で人生の、夢のような天国
 を経験。そして次には地獄も経験。服役後は、FBIとは協力関係に至り、自分の
 人生を、ハリウッドの2大スター、ディカプリオとトムハンクスに演じてもらう。
  実に実にダイナミックな桁外れの人生だ。
 

                  2003年12月9日



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